考え方一覧

人が怒るとき。

私は電車で通勤している。会社は神奈川県の海老名市にある。自宅は東急田園都市線沿いにあり、一時間強かかる。東急線下りの終点の中央林間まで行き、小田急江の島線に乗り換える。これで相模大野まで行き、小田急本線に乗り換え海老名まで行く。通勤で電車を2回乗り換えるのだが、これが結構大変なのだ。相模大野ではホームの移動だけですむが、中央林間では一旦改札を出てから連絡通路を通っての移動となる。ここでは、東急線からの人と小田急線からの人が通路の真ん中でぶっかりあったりする。先日、通路のちょうどまん中当たりを小田急線側に向って歩いていると,向うから勢いよく歩いてきた若物が勢いよくぶっかってきた。私は肩を押されて後に仰けぞってしまった。男はそのまま一言も発せず足早に去っていった。私はとても腹が立った。

今回は「怒り」がテーマだ。人間は怒る。いや、”人間は”ではないな、”動物は”かな。いや、待てよ。ヘビとかトカゲとかは怒るのか?昆虫は怒る?うーん、わからないなぁ。敵に襲われた時や獲物を襲う時などには怒った様に振る舞うけど、あれは怒りなのだろうか。

さて、人間が怒るのはどういう時なのだろうか。人は何に対して怒るのだろうか。何が理由で怒るのだろうか。

駅の乗り換え通路でぶっかってきた奴に対してオレは何を怒ったのか。ぶっかった痛み?いや、大して痛くはなかった。自分の行動を遮った奴の行動か?奴の自分勝手な振る舞いに対してか?ぶつかっても謝りもしない無礼に対してか?

車を運転するとちょっとしたことでも怒る人がいる。車で最も多いケースは「割りこみ」だろう。隣の車線から距離をおかずに自分の車の鼻先に進入してくるヤツに腹を立てるパターンだ。この場合、実際には自分が損をすることはほとんどない。割込まれたからといって自分の車が目的地に到着するのが何十分、何時間と遅れる訳がない。実質、自分には何の損も発生しない。なのに、割り込まれると腹がたつ。

かく言う私も若い頃はこのタイプの運転手だった。ちょっとでも割り込まれると、「なんだよこいつは!スペースもないのに強引に入りこんできて、頭に来るなぁ!」

若い頃の私が運転中に割り込まれて怒ったのは何故だろう。ルールを守らない者に対しての怒りだろうか。私の車の前のスペースは私のものなのに、そのものを奪われたからだろうか、言い換えると、私の権利を強引に奪われたからだろうか。それとも、俺が先にこのレーンを走っていたのに、横からから入り込んで来て既得権を侵害されたことへの怒りだろうか。はたまた、危険を感じて、危害を加えてくるものへの怒りだろうか。

ところが、ある出来事により私の割り込みへの怒りは全くと言っていいほどなくなってしまったのである。しかも、信じられないほど簡単に、である。それは仕事で台湾に出張に行った時のことだった。タクシーで移動することになり、ー台のタクシーに乗車した。まもなくタクシーは高速道路へ。すると、右から左から、タクシーの前方の隙間に車がガンガン割り込んでくるのだ。身の危険を感じるほどガンガンと。ご存知の通り、台湾、中国の車の運転はスリルに満ちている。今ではそんなことはないが、上海のタクシーなんかは10年程前まではドアが潰れてない車を見つける方が難しいくらいだった。タクシー待ちをしている時に考える事はいつも「どうか綺麗なボディのタクシーに当たりますように」だった。

ガンガンと割り込まれる台湾タクシーの運転手さんもさぞや怒ってるだろう、と思いきや、平然とした顔付きで運転しているではないか。なんでだろう。疑問に思って運転手に聞いてみた。「どうしてみんなガンガンと割り込んでくるんだ。よく平気でいられるなぁ。交通ルールはどうなっているんだ。」すると運転手から思いもよらぬ答えが返ってきたのだ。「いいんだよ、急いでいる奴が優先さ。急いでいるんだから割り込んで先へ先へと行くのは当たり前だろうよ。」

この言葉で私の考えは変わった。「あ!当たり前、だよな、それって。こっちはそんなに急いでもいないのに、割り込まれるとなんでいつもあんなに怒っていたのだろうか。」その時以来、余程危険な割り込み方をされない限り、割り込まれて怒ることは無くなったのだった。

いろいろな場所で、いろいろな場面で怒っている人を見かける。パチンコ台に怒りをぶつける人。乗り物が遅れて駅員に怒りをぶつける人。酔っぱらって怒る人。 ランボー怒りのアフガン(ちと古すぎ?)、などなど。人は様々なことに対して怒る。理由も様々 だろう。しかし、ちょっと考え方を変えれば、これまで、なんでこの事で怒っていたんだろう、と思えることもある。何かに怒ってストレスを感じるよりも、考え方を変えて、怒らない生き方のほうが楽しいのでは、とこの頃よく思うのである。

と言いつつ、今日もきかん坊の子供たちを怒ってしまうのす。。。まだまだ修行が足りんなぁ。