2020年02月23日一覧

思い込みは恐ろしい。

「物を観察すると観察した瞬間に形が変わってしまう」という話を聞いたことがある。
量子論での話だったと思うが、詳しく憶えていない。
若い頃にこの話を聞いて、「そんなことがあるのか!ならば、小さい頃に私を悩ませたあの空想はもしかしたら本当に起こっているのかも知れないじゃないか。」と驚いた。
あの空想とは。「お母さんやお父さんはいつも僕より遅くまで起きているが何をしているのだろう。もしかしたら、本当はお母さんとお父さんは宇宙人で、僕がねている間に宇宙人に戻って地球征服の作戦を進めているかもしれない。もしかしたら、本当は骸骨で、僕が寝ているときは手や足やアゴをカチカチ鳴らしているんじゃないか。僕が朝起きて、お母さんとお父さんに「おはよう」と言って顔を見た瞬間に人間に戻っているんじゃないか。もしかしたら、お兄ちゃんもそうかもしれない。僕一人だけ人間で、他の家族はみんな宇宙人か骸骨なんじゃないか?いやいや、家族だけじゃないぞ、友達も、学校の生徒も、道を歩いてるおじさんもおばさんも・・・地球人全部がそうかもしれない!怖いよぉ!助けてくれよぉ!」
いま考えると、地球人がみんな宇宙人って何のこっちゃ?と思いますよ、いくらなんでも。自分だけが人間(地球人)で他の人は宇宙人なんて、何でそんなことになるのかわからないし、そんな状況なら、わざわざ昼間に私だけのためにみんなが地球人になりすます意味がないよね。みんなガイコツ?なんで自分だけ生きているの?
何でこんなことを考えたんだろう。もしかしたら、他人と自分が違うということを意識し始めたからかもしれない。こういうことを自我の目覚めというのかもしれない。
さて、物を観察すると物が変わるとはどういうことだろうか。
「人間の意思が何らかの形で物に影響を与えるんだ。じゃあ、念力は本当に存在するかもしれない。気功で相手に触れずに投げ飛ばす技は本当に可能なんだ。ドラゴンボールの孫は本当にかめはめ波で敵を倒せるんだ」。
この話を聞いたときにこんなことを考えたんだと思う。思う、というのは昔の事なので忘れてしまったからだ。つい先日までこの話はずっと私の記憶の片隅に追いやられていた。


NHKにお気に入りの番組がある。日曜日の夜にやっているサイエンスZEROという番組だ。現代科学の最先端の話を解りやすく教えてくれる。この番組から数多くのことを知り、人類の未来を考えることはとても楽しい。
先日、ZEROで次世代の顕微鏡について取り上げられていた。この時、若い頃に聞いた観察時瞬間変形説を理解する手がかりが目の前に現れた。
極微小なものを感察する際にはとても強力な光が必要となる。日光の何億倍もの明るさである。光には質量があるので、物に光をあてると力がかかる。今までの顕微鏡は光を当ててから観察するまでの時間が長く、物が変形してしまうのだ。新しい顕微鏡はこの時間が短かいために変形する前に観察ができるそうだ。
そういうことだったのか。物事にはちゃんと理屈があるものだな。そういうことをきちんと理解することが大切なんだな。そう反省した。
この大切なことを子供に伝えたくなって、娘に話しかけた。
「ねえねえ「物を観察すると観察した瞬間に形が変わってしまう」って話、知ってる?量子論っていうんだよ。」
「うん、この前、ラジオで量子論のことをやっていたよ。」
「あれはどういうことか知ってる?」
「ううん知らない。」
「実は、・・・・(以下省略)ってことらしいよ。」
「ん~、それってラジオの説明とは違うよ?」
「じゃあ、ちゃんと調べてみるよ。」
よく考えたら量子論のことをきちんと調べたことがない。これまで何で調べなかったのだろう。
きちんと調べてみた。全く違っていた。
量子論のことはここでは詳しく書かないが(難しくて書けないが)、物質を構成する粒子が空間のどこに位置するかは時間によって変わる、ということに関係している様だ。
事実を正しく理解することは本当に大切だ。本当のことをきちんと理解せずに思い込んでしまうことはとても恥ずかしく、良くないことだと深く反省させられた。
ところで、ラジオを聞いて娘は量子論を理解したのだろうか・・・。